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香具山 、畝傍山 、耳成山 −大和三山のほぼ中心に位置する藤原宮跡では、いまも発掘作業が進められている。ベルトコンベアで運ばれていく土の塊は、いにしえの人々の魂にも重なり合う。鯉のぼりがたなびく奥明日香の集落・栢森(かやのもり)に暮らす木工作家の拓未(こみずとうた)は、数年前にこの地に移り住んできた。古民家を自ら改築し、村のおばあちゃんに畑づくりを習い、多くを語りたがらない彼がようやく見出した自分の居場所だ。
そんな生活を始めたころ、かつて同級生だった加夜子に再会する。朱花という色に魅せられた染色家の加夜子(大島葉子)は、地元PR紙の編集者の恋人・哲也(明川哲也)と長年一緒に暮らしている。紅花の真紅の液体に布をくぐらせ、したたる血のような朱花色は、加夜子のうちに秘められた狂気にも似ている。再会したふたりはいつしか愛しあうようになり、つばめが巣作りをはじめた工房には穏やかな時間が流れる。
戦前、互いに気持ちを寄せ合っていたにもかかわらず、添い遂げることのできなかった加夜子の祖母・妙子(大島葉子)と拓未の祖父・久雄(小水たいが)に代わって、その想いを遂げようとするかのように幸せなときを過ごすふたりだったが、加夜子が身籠ったことをきっかけに、平穏な日常に変化が訪れる……
拓未は、その小さな命の存在に戸惑いながらも、生まれ来る命を待つ決心をする。そうして大好きな藤原宮跡に出かけると、突然声をかけられた考古学者(麿赤兒)に発掘現場を案内される。奇妙な偶然――。その気配は、戦時中の祖父と考古学者―よっちゃんの少年時代(田中茜乃介)へと交錯してゆく。 |
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